研究概要 |
多くの硫黄原子をもつジチオレート配位子を有する金属錯体の酸化体固体においては、配位子中の多くの硫黄原子の接近に基づく錯体分子間の相互作用によって電導経路が形成され、電導体となりうる。(1)昨年度に引き続いて、C_8H_4S_8^<2->配位子と類似のC_6S_8骨格を有し、しかも長鎖アルキル基を有するジチオレート配位子を有する錯体を検討した。[NEt_4][Co{C_6S_8(C_<10>H_<21>)_2}_2]を合成し、ヨウ素で酸化すると、1電子酸化体[Co{C_6S_8(C_<10>H_<21>)_2}_2]およびさらに酸化された[Co{C_6S_8(C_<10>H_<21>)_2}_2](I_3)_<0.7>が得られ、その電導度は、それぞれ4.2x10^<-6>および1.1x10^<-5>Scm^<-1>(粉末加圧成型試料、室温)である。長鎖アルキル基間の相互作用および金属ジチオレート部分間の会合によって無機/有機層状配列が可能で、ジチオレート配位子部分の硫黄原子を介する会合による電導経路形成を示している。(2)PtN_2S_2型の分極した平面性多硫黄ジチオレート白金(II)錯体[Pt(L)(C_8H_4S_8)](L=2,2′-ジピリジン、N-ブチル-2-ピコリンアルジミン)を得て、これらをヨウ素あるいはTCNQで酸化したとき、0.6-1電子酸化体が得られ、そのときジチオレート配位子で酸化が起こり、1.4x10^<-5>-6.5x10^<-3>Scm^<-1>の電導度を示した。また、1電子酸化体[Pt(bpy)(C_8H_4S_8)][BF_4]の結晶を得て、その結晶構造を決定した。(3)C_8H_4S_8配位子を有するシクロペンタジエニル金属錯体[NMe_4][M(L)(C_8H_4S_8)](M=Ti(IV),Zr(IV),Hf(IV);L=η^5-C_5H_5^-,η^5-C_5Me_5^-)を得た。これらの錯体は、低い酸化電位を有し、ヨウ素あるいはTCNQでも酸化することができ、1.0-1.8電子酸化体を得た。とくに1.3電子酸化体の電導度は高く(0.010-0.16Scm^<-1>)、かさ高いη^5-C_5H_5あるいはη^5-C_5Me_5基をもつ酸化体においてもジチオレート配位子部分の効果的な会合を示した。
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