研究概要 |
本研究では,芳香族置換基を持つ亜鉛錯体の自己集積性を利用した核酸高分子の高次構造変換と,多核亜鉛錯体を用いた水溶液中における三次元超分子システムの構築という2つの研究成果を得た。(1)アクリジンやアントラキノンを分子内に持つ大環状テトラアミン亜鉛錯体と,二重らせん構造の核酸分子との相互作用の検討を行った。その結果,アクリジンを持つ亜鉛錯体は,アクリジン部の自己集積作用と亜鉛錯体部のチミン塩基認識作用により,二重らせん構造のDNAのポリチミン部位を選択的に認識し,DNAの二重らせん構造を一本鎖に解離させる作用を持っていることが明かとなった。さらに,亜鉛錯体のDNAへの結合は,転写因子(TATA結合蛋白質)のDNAへの結合を阻害した。アクリジンを分子内に持つ大環状テトラアミン亜鉛錯体は,遺伝子発現を制御する分子としての応用が期待される。(2)オリジナルに開発した亜鉛酵素活性中心モデル錯体の化学的性質に基づいて,新規の三核の亜鉛錯体とトリアニオン(シアヌル酸やリン酸モノエステルなど)との新規自己集積型ナノスケール超分子群を合成した。新規超分子の結晶ならびに溶液内構造を検討し,それらの内部空間へのゲスト分子(アダマンタンや非水溶媒など)の包接現象についても詳しく検討した。今後,アニオン分子としては,ジイミド化合物,ポリカルボン酸化合物,ポリチオール化合物(タンパク質やペプチドなども含む),ポリリン酸化合物などについても検討して行きたい。
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