研究概要 |
1)大環状配位子(H_2L2_<py>)を用いて金属イオンの異なる4種類のホスト性四核金属錯体[Co(II),Ni(II),Cu(II),Zn(II)]の合成に成功し、さらにレドックス活性なクロラニル酸イオン(CA^<2->)により環内の金属イオンを連結\集積化する「環内集積化法」を確立した。X線解析により、これら4種の錯体はいずれも同じような集積構造をとることを明らかにした。酸化還元挙動に関しては、(1)Cu(II)錯体を除くCo(II)、Ni(II)、Zn(II)の四核錯体では、まず先に2つのCA^<2->ユニットが1段階2電子還元を受け、生じた2個のラジカル同士は反強磁性的にカップルすることにより、バイラジカル種が安定化すること、(2)酸化に対しては金属上での酸化が優先するが、酸化種が不安定で混合原子価状態M(II)_<4-x>M(III)_xの生成には、M(III)を安定化できるようペンダント基への工夫が必要である事が分かった。 2)2,6-diformyl-4-methylphenolと1,11-diamino-3,9-dimethyl-3,9-diazo-6-oxaundecaneとのシッフ塩基縮合反応時にMn(CH_3COO)_2をテンプレートメタルとして用いたところ、[6+6]シッフ塩基環化反応が進行し、巨大な12核Mn(II)環状錯体が生成することを見い出した。一つの大環状配位子に捕捉される金属個数としてはこれまでの最大の数を誇り、錯体中央には約8Å程度の空孔が存在し、結晶中ではそこに過塩素酸イオンがトラップされていることを明らかにした。 ESI-mass測定から、溶液中でも過塩素酸イオンがトラップされたまま巨大環状構造を保持していることが示唆された。この錯体は、同様な二核コアを有するMn(II)二核錯体と同様にカタラーゼ類似活性を示し、過酸化水素の分解速度は他のマンガンカタラーゼモデル錯体と同程度であることが確認された。
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