研究概要 |
本研究は3核レニウム硫化物クラスターを出発化合物として,集積型レニウム硫化物を合成し,それらの構造を明らかにすることを目的とした.出発化合物として使用できる3核レニウム塩化物硫化物は[Re_3S_7Cl_6]Cl1のみ報告されている.この化合物の一時に合成できる量はたかだか1gであるので,十分な化学を展開するためには,合成条件を検討し,再現性良く多量の合成を達成することが必要である. 文献記載の合成条件を改良することにより,再現性よく3核クラスター化合物1を合成できることを見出した.すなわち,金属レニウムと塩化スルフリルをオートクレーブ中で,340℃,5日間反応することにより,オキシ塩化レニウムReOCl_4を合成し,これと硫黄を同じ反応器中で200℃,2時間反応して[Re_3S_7Cl_6]Clをおよそ60%の収率で得た. 3核クラスター化合物1とトリエチルホスフィンと反応すると,[HPEt_3][Re_3S_4Cl_6(PEt_3)_3]2が生成することを既に報告しているが,2をベンゼンーヘキサンから再結晶を試みたところ,黒色板状結晶が得られた.この化合物の元素分析,赤外スペクトル,単結晶X線構造解析から,末端塩素配位子の1つがヒドロキソに置換された錯体[Re_3S_4Cl_5(OH)(PEt_3)_3]3であることが明らかになった. 水溶液中において,化合物1とフェリシアン化カリウムを反応すると,直ちに濃い青緑色の溶液になり,可視スペクトルは720nmに強い吸収を示す.アセトンを添加すると青緑色沈殿が得られ,このものの赤外スペクトルは2080cm^<-1>にCN基の吸収を有するが,フェリシアン化カリウムにおけるCN(2125cm^<-1>)から低波数側にシフトしていることから,レニウムと鉄間にCN架橋した化合物であることが,推定される.
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