研究概要 |
1)2つのエチレンジアミンユニットをアルキルスペーサーでつないだ配位子は四核銅錯体を与えた。この錯体は3,5-di-tert-butylcatechol(DTBC)の酸素酸化反応を大きく加速した。さらに、溶液中で四核構造を安定に保つために、4つのエチレンジアミンユニットをもつ八座の大環状配位子を合成した。この四核銅錯体は、低濃度でも反応速度を大きく向上させた。DTBCの酸素酸化反応について、二核錯体と比較すると四核錯体で30倍の加速効果がみられた。この四核銅錯体は、これまでのアルキルスペーサーを用いた四核銅錯体の結果と同様に酸素分子への2電子移動を加速した。2)Na^+、K^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>などのアルカリおよびアルカリ土類金属イオンは、集積化して多様な機能を発現することはないが、構造因子として働き、タンパクの機能発現に不可欠な働きを持つことが知られている。従って、典型金属の構造因子としての機能を集積型金属錯体に導入することができれば、集積型金属錯体の機能制御の新たな手法として有用であると考えられる。この点について、本年度から、アルカリおよびアルカリ土類金属を用いた遷移金属イオンの集積化と機能制御を試みた。この研究の成果として、クラウンエーテルをもつトリピリジルメタン配位子(LO4,LO5)を合成した。これらの配位子の銅(I)錯体は酸素分子と反応して、μ-η^2;η^2-パーオキソ二核銅(II)錯体を生成した。この酸素錯体の安定性は、Na^+、K^+、Mg^<2+>、Ca^<2+>などのアルカリおよびアルカリ土類金属イオンを共存させる事によって、向上した。クラウン環に4つの酸素原子をもつLO4の錯体ではNa^+を用いたときに大きな安定化の効果が得られ、クラウン環に5つの酸素原子をもつLO5の錯体ではK^+を用いたときに大きな安定化の効果が得られた。
|