研究概要 |
先頃,我々は 1.日本人男性(子どものある人)のY染色体を4つに分類し,それぞれのタイプの男性の精子数を調べると,タイプにより精子数が有意に異なる。 2.精子数の少ないタイプは,他のタイプに比べて無精子症になりやすい。 ことを報告した。また,いくつかのマスコミで報じられたように,このうち精子数の少ないタイプは原日本人(縄文系)のタイプと考えられる。 これらの事実から,直ちに発せられる質問の代表的なものは,「なぜ精子数が少なく無精子になりやすい男性の系統が生き残ってきたのか」ということであり,さまざまな研究の方向性が考えられるが,本研究では 1.ヒトとヒトで,どの程度Y染色体の構造が違うのが。 2.Y染色体の構造の違いがどのようにして,精子数の違いにつながるのか。 に絞って研究を進めた。 Y染色体には今のところ精子形成に関与していると考えられる遺伝子2つ(RBM,DAZ)が報告されているが,どちらも複数コピーある。これらの遺伝子が精子形成に関わっているという確たる証明がなされてはいない一方で,他の遺伝子がある可能性も指摘されている。本研究ではRBM,DAZを含め,個体によるY染色体の構造の違い(遺伝子のコピー数,各コピーのプロモータ領域,コーディング領域の塩基配列の違いを解析することを目的としているが,まずコピー数の違いから検討した。 P.Yenの方法によるとDAZのそれぞれのコピーの違いを判別することができる。この方法を日本人にも当てはめ,まず,P.Yenのプローブと実験系を使って,日本人の4つのタイプのY染色体において,DAZの構造を解析,その違いを明らかにした。その結果,タイプIIとしていた系統の男性では,他のタイプの男性に見られるバンド1本が明らかに欠失していた。 一方,将来の研究展望のもと理化学研究所藤山秋佐夫先生との共同で4つの男性の系統のY染色体特異的ライブラリーを樹立を試みている。
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