研究概要 |
炭酸固定において無機炭素(CO_2,HCO_3^-)の細胞内への輸送は、光合成効率を規定する重要な要因である。無機炭素を細胞内へ能動的に輸送するシステム(無機炭素濃縮機構:CCM)は、培養中の無機炭素の供給が不足すると誘導され、逆に無機炭素が十分供給されると抑制される。本研究では、真核光合成生物のモデル系として単細胞緑藻クラミドモナスを実験材料とし、次の点を解明した。 1.培養中のCO_2濃度変動に応答する炭酸脱水酵素遺伝子CAH1の発現調節に関わるシス領域は,低CO_2条件で転写活性化に必要な領域と,高CO_2で転写抑制に必要な領域とからなる。低CO_2誘導に必要な領域には,コア配列が2つ存在し,両者に配列特異的なDNA結合タンパク質が存在した。これらのタンパク質は、CAH1の誘導されない高coや暗所で培養した細胞の核抽出液にも存在していた。 2.CAH1プロモーターとレポーター遺伝子ARSとの融合遺伝子をもつ株を宿主として形質転換を行い、ARS活性が低CO_2条件で誘導されない株12株と高CO_2で抑制されない株7株を得た。 3.低CO_2条件に順化できない変異株C16の変異原因遺伝子Ccm1を、単離した。cDNAから推定されるタンパク質は、ジンクフィンガードメインをもち親水性が高い。Ccm1は,低CO_2に順化できない別の変異株cia-5の変異を相補した。cia-5の変異では、ジンクフィンガードメインのHis-54がチロシンに変化していた。また、Ccm1の発現は、CO_2や光に影響を受けず、構成的であったので、CO_2シグナルの伝達には、CCM1タンパク質の修飾が重要である可能性が示唆された。
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