研究概要 |
葉緑体における光合成遺伝子の転写を司るplastid-encoded plastid RNAポリメラーゼ(PEP)は,そのコア酵素を構成するα,β,β',およびβ″サブユニットが葉緑体ゲノムにコードされており,転写される遺伝子のプロモーター特異性を支配していると考えられるシグマ(σ)因子が核ゲノムにコードされている. シロイヌナズナ緑葉において機能しているσ因子のリン酸化などの修飾状況を解析するためには,緑葉細胞からσ因子を回収しなければならない.合成ペプチドを用いて作製したSIG1(遺伝子命名変更)特異的抗体は,遊離型SIG1の認識および回収には有効であった.しかしながら,緑葉細胞内において,σ因子は主としてPEPホロ酵素として存在すると考えられ,その回収にSIG1特異的抗体は不向きである.コア酵素を構成するa,β,およびβ″サブユニットのC末端約200アミノ酸をチオレドキシン融合タンパク質として,大腸菌において発現させた.また,同様の方法論により,各SIGを発現させ,ウサギを用いて抗体を作製した.さらに,緑葉細胞からσ因子を回収する手段として,ヒスチジンタグおよびV5エピトープタグの利用を検討した. すべてのSIGsは,前駆体として合成され,葉緑体への取込みとともに,transitpeptideが切断され,機能する成熟体σ因子になると考えられる.シロイヌナズナ緑葉において高発現し,かつ葉緑体遺伝子転写開始活性の高いSIG1に注目した.SIG1特異的抗体の利用およびin vitro転写・翻訳系により作らせた^<35>S-標識SIG1前駆体を単離葉緑体に取込ませることにより,成熟体サイズを検討した.
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