研究概要 |
本研究は、脊椎動物の器官形成の分子プログラムを理解するために、FGF10ノックアウトマウス(KO)を利用して、器官形成に関与する新規あるいは既知の形態形成遺伝子を単離同定し、FGF10の下位ではたらく遺伝子の全体像を明らかにすることを目的とした。 まず、FGF10の器官発生における役割を明確にするために、昨年より行っているFGF10KOマウスの解析を継続した(Sekine et al.,1999,Nature Genetics;Ohuchi et al.,2000,BBRC).本マウスでは、上皮-間葉相互作用により形成されるほとんどの組織・器官に程度の差はあるが,異常が観察された.そこで,その異常とFgf10の発現部位との関係をさらに明確にするために,組織切片を用いたin situ hybridizationを行なった.その結果,Fgf10は主に間葉の組織に発現していた.しかし,脳下垂体や耳胞では上皮にも発現することが観察された.これらの結果から,FGF10は例外もあるが,主に上皮-間葉相互作用の上皮に作用する間葉の因子であることがより明確になった. 先に我々は,Fgf10が四肢が形成される領域に特異的に発現し,ニワトリの側腹部に過剰な肢(Dasoku〕を誘導することを見出し,FGF10が四肢形成を誘導する初期因子の一つであることを報告した(Ohuchi et al.,1997,Development)。四肢は器官形成のよいモデル系である。しかし,FGF10の標的遺伝子については,まだほとんど解明されていなかった.そこで,PCRを用いた引き算法により,FGF10KOマウスを用いて,正常肢芽に特異的に発現している遺伝子の単離を試みた.引き算された遺伝子の中からランダムに300個を選び,塩基配列を決定した.解析の結果,80%既知の遺伝子で,20%が未知の遺伝子であった.未知の遺伝子については,whole-mount in situ hybridization法により発現パターンを調べ,興味あるパターンを示したクローンについてさらに解析中である.
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