研究概要 |
本研究の目的は,ニワトリ胚消化管をモデルとして,その分化と形態形成における種々の遺伝子がどのように時間的空間的に発現するか,それらの遺伝子間の相互作用はいかなるものかを解析することである。平成12年度においては,ニワトリ胚前胃(腺胃)の腺上皮細胞で特異的に発現するニワトリ胚期ペプシノゲン(ECPg)の発現を直接制御する因子を探索し,その発現に対する間充織の役割を検討することと,多くの器官形成の形態形成に関わっているWnt遺伝子群の発現と機能を解析した。ECPgの発現に関しては,腺上皮細胞で発現が上昇するcGATA-5と,低下するcSox-2が直接にその発現を制御していることを見いだした。しかも,ECPgの上流にはこれらの転写因子の結合サイトがあること,少なくともcGATA-5はこのサイトに結合してその効果を現すことが明らかになった。これにより,腺上皮細胞で特異的に発現する,あるいは特的に発現が低下する遺伝子の発現調節の解析への道が開かれた。また,Wnt遺伝子群に関しては,多くの遺伝子のうちWnt-5aのみが胃域で発現すること,その発現パターンは腺の形成と密接に関連していることが明らかになり,今後この遺伝子の機能を解析する手がかりを与えた。さらに,Wntシグナルの伝達を阻害すると考えられているDickkopf-3の発現も観察したところ,Wnt-5aと相補的な発現を示し,これらの遺伝子の相互作用が前胃の形態形成と細胞分化に関わっている可能性が示唆された。
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