研究概要 |
四肢形成におけるWntファミリーの活性調節にかかわる因子の役割を調べ,以下の成果が得られた。 1.Wntの分泌製御に関与するニワトリPorcupineの同定を試み,そのcDNAを得た。Porcupineはニワトリ肢芽の間充織全域で発現していたが,四肢の発生に伴い中心部の発現は減弱する。 2.AER形成にはWnt-3aが関与していることが示唆されているが,その発現パターンなどからはWnt-3a以外のメンバーである可能性が高く,またマウスAERではWnt-10aが発現していることから,ニワトリWnt-10aの同定を試みた。全長をコードするcDNAを得て発現パターンを調べると,肢芽形成以前では外胚葉(外皮)で均一に発現し,その後,予定肢芽領域の外皮で強く発現するようになる。しかしながら,ニワトリWnt-10aを予定前肢域の外胚葉で過剰発現してもFgf-8の発現誘導は見られず,Wnt-10aもWnt-3aと同様にAER形成には直接関与していないと考えられる。 3.Wntレセプターの1つFrizzled-10(Fz-10)は肢芽先端部の背側の間充織で発現し,Wnt-7aおよびShhとの因果関係が示唆される。Shh産生細胞の移植により12時間で肢芽前部の背側でFz-10の発現が誘導される。背側外皮を除去してWnt-7aシグナルを排除すると短時間のうちにFz-10の発現が消失する。さらに,Wnt-7a産生細胞を腹側に移植するとその発現が誘導される。故に,Fz-10はShhとWnt-7aによって正の調節を受けていることが判明した。ツメガエルのアニマルキャップではFz-10によってSiamois,Xnr3の発現が誘導され,この効果はWnt-7aとの共存によって相乗的に増大する。一方,Wnt-3aとの共存では相乗効果は見られず,Fz-10はWnt-7aに特異的なレセプターとして機能していることが示された。
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