研究概要 |
EWSは,Ewing肉腫でみられる染色体相互転座t(11;22)において22q12に転座する遺伝子として見出された(Nature359,162-165,1992).その後もいくつかの固形腫瘍において,EWSがFli1,ATFやWT1と融合遺伝子を形成していることが報告されている.EWSは656アミノ酸から構成されており,そのC-末端半分側にはRGGボックス,RNA認識モチーフやZincフィンガーモチーフを有しているが,その本来の機能的役割は全く解っていない. CBP(CREB-Binding Protein)は,cystein/histidine-rich(C/H)domainが3カ所(CH1,CH2,CH3),CREB結合領域,bromo-domainやglutamine rich domainが存在し,進化の過程で多様な機能ドメインを獲得した可能性を思わせる特徴的な構造から構成されている.そして,これらのドメインを介して基本転写因子を含めた様々な因子と複合体を形成することが明らかになりつつあり,Histone acetyltransferase(HAT)活性を有する転写インテグレーター(統合装置)としてのCBPによる統合的転写制御機構が注目を集めている. 興味深いことに,申請者らはCBPとEWSがin vitroで結合することを見出した(未発表).そこで12年度の公募申請研究では,以下の2点に焦点を絞り,CBPとEWSの相互作用の細胞生物学的意義を明らかにすることを目的とした. ≪1≫結合領域の同定:EWSのCBPへの結合領域を詳細に明らかにした. ≪2≫細胞生物学的意義:昨年度の研究によって,申請者らはβ-cateninがCBPのCH3領域に結合しp53依存的なアポトーシスを抑制する系を確立している.そこで,EWSがp53依存的なアポトーシスにどのように作用するかを明らかにする.また,β-cateninへの影響も現在検討中である.
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