研究概要 |
LIMホメオドメイン蛋白質Xlim-1はアフリカツメガエルのシュペーマン・オーガナイザー領域に特異的に発現する。LIMドメイン変異体の活性型Xlim-1を異所発現させると神経誘導などのオーガナイザー活性を現わす。そこで、Xlim-1のオーガナイザーにおける役割がどの機能ドメインによって担われているのかを明らかにすることを目的とし、C末領域の機能解析を行った。Xlim-1のパラログ遺伝子Xlim-5との比較により、C末領域を5つの保存領域CCR(C-terminal conserved region)1から5に分けそれぞれの役割を解析した。CCR1あるいはCCR2の欠失体を腹側帯域で高発現(mRNA量で1ng/embryo)させると単独で2次軸形成能が現れることを見い出した。この活性はLIMドメインの変異体の活性と類似していることより、CCR1からCCR2にかけての領域がXlim-1の活性を負に制御していることが示唆された。次にXlim-1の活性化共役因子Ldb1との共発現の系で検討したところ、CCR2とCCR4の領域が2次軸形成能に必要な領域であることが明かとなった。特にCCR2を欠失させるとほとんど活性が消失したことより、CCR2が主要な転写活性化ドメインであり、CCR4がそれに対して補助的に働くことが予想された。CCR2の進化上保存された5つのチロシンをアラニンに置換してたところ活性が完全に消失したことより、これらのチロシンは転写活性化補助因子(co-activator)との相互作用に必須であることを示唆している。しかし既知の転写活性化補助因子であるCBP,SRC-1,TIF2との結合は認められたかったこと、および転写活性化に不可欠なチロシンの存在は、我々の知る限りにおいて報告例がないことより、新規な転写活性化ドメインであると予想している。今後はこれらの領域と相互作用する蛋白質を同定することで、オーガナイザーにおけるXlim-1の活性化機構が明らかになると期待される。
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