研究概要 |
核小体に存在する低分子RNA(snoRNA)が、脊椎動物において他の遺伝子のイントロン内にコードされていることが発見され、このRNAはリボソームの成熟過程でrRNAのリボースのメチル化またはウリジン残基のシュードウリジル化のためのガイドとして働いていることが明かになった。しかし、snoRNA遺伝子が入り込んでいる宿主遺伝子については、多くはリボソームタンパク質(RP)遺伝子であるということ以外、なぜ、どのようにしてそこに挿入されたのか、ほとんど研究は行われていない。そこで本研究では、細菌人工染色体(BAC)を用い、ヒトRP遺伝子に内在するsnoRNA遺伝子の系統的な解析を試みた。 [結果] 1.BACライブラリーを使って、80種類のRP遺伝子のうち75個の遺伝子のクローニングに成功した。 2.これらBACクローンのシーケンスを行い、29個の遺伝子の完全長の塩基配列と15個の部分配列を決定した。 3.これらの塩基配列を解析することにより、新たに11個のsnoRNA遺伝子の挿入部位(宿主遺伝子)を同定した。すでに塩基配列が決定されている遺伝子も含め、全部で33個のsnoRNAがRP遺伝子のイントロン内にコードされていることが分かった。 4.一方、酵母のsnoRNA遺伝子は独立した遺伝子として存在するが,データベースの解析の結果、13個のsnoRNA遺伝子がゲノム上でRP遺伝子に近接していることが分かった。 現在,ゲノムDNA配列が決定された線虫とショウジョウバエの宿主遺伝子の同定を行っており,宿主遺伝子そして入り込んでいるイントロン配列の特異性について解析している。今後は,このような系統的解析をふまえて,snoRNA遺伝子がどのような機構で他の遺伝子のイントロンに入り込んだのか解明して行きたい。
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