研究概要 |
STAM1は種々のサイトカインによりチロシンリン酸化を受けるアダプター分子である(Immunity.,6,449-457,1997),さらにSTAM1 SH3領域に会合する分子として我々はAMSHを単離同定した(J.Biol.Chem.,274,19129-19135,1999)。AMSHの機能を検索する目的でAMSH欠損マウスを作出した結果、AMSHホモ欠損マウスはほぼ正常に生まれてくるが、生後10日以降より成長遅延、末梢神経反射異常、眼瞼下垂等の異常を呈し、生後3週で100%死亡した。同マウスの組織像を検索した結果、脳以外の主要な組織に明らかな異常を認めず、誕生直後では脳組織も正常であった。しかし、生後7日頃より大脳皮質、顔面神経核、海馬等の脳神経組織特異的に細胞死を認めた。この時期に低血糖やアシドーシスはないことから、AMSH欠損マウスの神経細胞死は一次的なものと考えられる。また、アポトーシスは小脳組織では認められず、脳神経細胞の一部のポピュレーションに特異的であることが示唆された。正常マウス脳組織におけるAMSHの発現をin situ hybridization法にて解析したところ、海馬、大脳皮質、小脳顆粒細胞層に一致して発現がみられた。その発現強度は胎生期に強く、生後15日まである程度認められたが、生後10週では胎生期の10分の1程度であった。すなわち、AMSH発現がある程度強い時期に一致して、AMSH欠損マウスの脳神経細胞死が観察された。AMSH欠損マウス胎児脳組織を用いた初代神経細胞培養を行ったところ、常法では数日以内に細胞が死滅し、in vitroでも細胞死の促進が観察された。リンパ球、線維芽細胞の初代培養においては、AMSH欠損による細胞死増強は観察されず、AMSH欠損による細胞死誘導は神経細胞特異的である(論文投稿中)。
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