研究概要 |
パーキンソン病(PD)、Lewy小体型痴呆症(DLB)の脳にはLewy小体(LB)などの形でα-synucleinが凝集・蓄積すること、家族性PD家系でα-synucleinの変異が見出されたことからα-synucleinのPD発症における役割が注目されている。本年度はDLB脳に蓄積したα-synucleinを精製し、特徴的な翻訳後修飾を蛋白化学的に解析した。DLB脳及び正常脳を段階的に可溶化すると、正常な可溶性α-synucleinは主にTris緩衝液に回収された。不溶画分を8M尿素に溶解すると、DLB脳特異的に約15kDの不溶性α-synucleinが検出された。尿素に溶解した蓄積α-synucleinをQ-sepharoseカラム・HPLCで精製、臭化シアンで消化後、HPLCでペプチド断片を分離し、MALDI-TOF Massで解析すると、128-140ペプチドに対応する質量数1515のシグナルに加えて、質量数1595を示すシグナルが検出された。さらに質量数1595のピークをMS/MS解析に供し、Ser129のリン酸化を確認した。リン酸化ペプチドを抗原としてSer129リン酸化α-synuclein特異抗体を作製しPD,DLB脳を染色すると、LB及びLewy neuriteが陽性を示した。DLB脳由来α-synucleinのウェスタンブロットでも、リン酸化α-synuclein特異抗体は約15kDaの不溶化α-synucleinのみと反応し、正常α-synucleinは反応しなかった。α-synucleinのSer129はG蛋白結合型受容体キナーゼ(GRK),CK1,CK2などによりリン酸化されうるが、そのレベルは生理的条件下では低いことが示されている。PD,DLB脳におけるα-synuclein蓄積の原因にリン酸化が関与する可能性がある。
|