研究概要 |
運動ニューロン疾患には筋萎縮性側索硬化症(ALS)をはじめとするいくつかの疾患が含まれるが,選択的運動ニューロン死が共通の最終のcommon pathwayである.しかしこの運動ニューロン死の機序は現在のところ不明である.運動ニューロン死の機序を解明するために運動ニューロンを単離してその発現遺伝子プロファイルを解析することが病態解明に有効であると考えている。対象としてはALS6例,対照8例の腰髄膨大部凍結組織を用いた.各々の凍結切片作成後,レーザーマイクロダイセクション法にて脊髄前角運動ニューロンを切り出した.50個の脊髄前角運動ニューロンを1サンプルとし,RNA抽出後cDNAを作成しT7 RNA polymeraseにより増幅した.増幅後サンプルを蛍光標識後cDNAマイクロアレー(Clontech社:Atlas Glass Human 1.0 Microarray)にメーカープロトコールに従いハイブリダイズ・洗浄後Gene Pix4000(Axon Instruments社)でスキャニングし定量化し遺伝子発現量の変化を検討した.cDNAマイクロアレー発現遺伝子プロファイル解析としてcDNAの機能別に分けてALS運動ニューロンと対照例の発現遺伝子を比較した.アポトーシス関連遺伝子群・カルシウム濃度制御関連遺伝子群においてはALS運動ニューロンは対照例比し全体的に発現量が多くなっているパターンを示した.サイドカイン・成長因子関連遺伝子群・転写因子関連遺伝子群では両者の発現パターンには大きな差がなかった.cDNAマイクロアレーにてALS運動ニューロンと対照例との間で発現量の大きな差が見られた各々の遺伝子群について定量RT-PCRおよび免疫染色でそのmRNAおよび蛋白レベルでの発現量の検証をしたところ,いづれもcDNAマイクロアレーでのデータと矛盾を見なかった.
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