研究概要 |
Immunophilin(IP)は中枢神経系に広範に発現しており,免疫抑制作用のないIP ligandであるGPI-1043の投与でも開発され,齧歯動物のパーキンソン病モデルにおいてGPI-1043投与が運動量の回復や線条体内dopamine(DA)量を回復する報告されているが否定的意見もあり評価は一定していない. 本研究の最終目的は霊長動物のパーキンソニズムモデルに対するGPI-1043の効果を明らかにし,パーキンソン病の治療にGPI-1043を適用し得るかどうかを検討することであるが,上記の議論から,まずマウスMPTPパーキンソニズムモデルを用い,GPI-1043の投与がMPTPによる黒質線条体DA系の障害を阻止し得るかどうかについて検討した. 雄性C57BL6マウス8週齢にMPTP投与3日前よりGPI-1043 10mg/kgを一日1回連日脳摘出前日まで皮下注した.MPTPは30mg/kgを一日2回,2日間の皮下投与とした.脳摘出はMPTP投与終了後5日目に行い,線条体DAを測定しMPTP+vehicle投与群とMPTP+GPI-1043投与群とを比較した. 上記のMPTP投与方法では線条体DA含有量の低下は軽度で,vehicle投与群ではDA含有量の低下は約25%であった.一方GPI-1043投与群ではMPTP投与によるDA含有量の低下はなく,GPI-1043によってMPTPのDAニューロン毒性が発現が抑制された.GPI-1043のDAニューロン再生や保護作用に関して否定的意見もあるが,本結果はDAニューロンに保護的に作用することを支持した.
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