研究課題/領域番号 |
12032210
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 講師 (40252457)
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研究期間 (年度) |
2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2000年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | ナトリウム利尿ペプチド / cGMP / 血管増殖 / 低分子量G蛋白 / Rho / 遊走 / 血管リモデリング / リン酸化 |
研究概要 |
我々はこれまで、血管弛緩作用を有するナトリウム利尿ペプチドがcGMP/Gキナーゼ(cGMP依存性プロテインキナーゼ)/Gax(growth arrest-specific homeobox;心血管系に特異的に発現する増殖抑制特異的ホメオボックス)を介して血管増殖に対しても抑制的に作用することを明らかにした。一方、従来よりVSMCの収縮におけるカルシウム感受性の意義が知られていたが、以前より低分子量G蛋白の一つであるRhoの関与が明らかにされていた。京都大学の成宮らは、彼らが同定したRhoに結合し活性化され、Rhoのシグナルを伝達する蛋白であるp160ROCK(Rho-associated coiled-coil forming kinase;Rhoキナーゼ)の阻害剤Y-27632を開発し、Rhoキナーゼがカルシウム感受性の亢進に関与することを報告した。最近我々は、Y-27632及びdominant negative Rhoキナーゼを用いて、RhoがVSMCの遊走・増殖に対してin vitro、in vivoで促進的に作用することを世界に先駆け証明した。そこで、我々は血管作動性物質はRho/Rhoキナーゼとの相互作用により、血管トーヌス及び血管リモデリングの双方に関わっていると仮説した。本年度は血管作動性物質による血管トーヌス及び血管リモデリング制御の分子機構の解明を目指し、cGMP/Gキナーゼ/Gax系と、Rho/Rhoキナーゼ系のクロストークを検討した。我々のクローニングしたヒトtypel Gキナーゼ完全長cDNA(F-cGK)及びcatalytic domainからのみ成り持続活性型として作用するGキナーゼミュータント(C-cGK)をVSMCに遺伝子導入し、VSMCのPDGFに対する遊走及び血清刺激下のDNA合成を検討したところ、F-cGK遺伝子導入群ではcGMP存在下において、またC-cGK遺伝子導入群ではcGMP存在下、非存在下ともにVSMCの遊走・増殖を有意に抑制した。C-cGK及びF-cGK(cGMP存在下)は、in vitroにおいてRhoAの188番目セリン残基をcAMP依存性プロテインキナーゼ(Aキナーゼ)と同様に特異的にリン酸化した。一方、他の低分子量G蛋白であるRacl、Cdc42はGキナーゼによるリン酸化を受けなかった。Hcla細胞にRhoA遺伝子を導入したところ、LPA刺激によりストレスファイバーの形成が、認められ、このRhoAの活性化によるストレスファイバー形成はC-cGK及びF-cGK(cGMP存在下)のco-transfectionにより抑制された。一方、188番目セリンをアラニンに置換したRhoA188Aでは、C-cGK及びF-cGKの作用を認めなかった。また、LPA刺激によるRhoAの細胞膜へのトランスロケーションもC-cGKのco-transfectionにより抑制された。Racl遺伝子導入によるmembrane ruffling及びRhoキナーゼ遺伝子導入によるactin bundlingは、C-cGKにより影響を受けなかった。 以上よりGキナーゼは低分子量G蛋白Rhoを直接リン酸化し、その活性化を抑制することが明らかとなり、Gキナーゼによる血管平滑筋細胞遊走増殖抑制におけるRho/Rhoキナーゼの抑制のメカニズムの存在が示唆された。
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