新規抗monocyte chemoattractant protein-1遺伝子治療によるバルーン傷害後血管狭窄反応の抑制 【目的】バルーン血管形成術後の再狭窄は新生内膜肥厚と陰性リモデリング(血管収縮)によって生じるが、その分子機序は不明である。バルーンによる血管拡張後早期にmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の発現が増し単球・マクロファージの血管壁内進入が生じることが明らがにされている。また、この炎症性変化が狭窄の成立に関与する可能性が示唆されている。しかし、この点を証明した研究はない。最近我々は変異型MCP-1遺伝子導入によってMCP-1による炎症が阻止されることを発見した。そこで本研究の目的は、この新しい方法を用いてバルーン傷害後血管狭窄反応に対するMCP-1の役割を実証することである。【方法】高コレステロール食負荷2週間投与後、ウサギ右総頚動脈を露出し同外頚動脈よりFogartycatheterを挿入しバルーン傷害モデルを作成した。手術の3日前、右大腿筋内に変異型MCP-1遺伝子(500μg+electroporation法、n=8)あるいは、PBS(PBS+electroporation法、n=7)を筋注した。手術4週間後に、頚部エコーを施行した。3日後、7日後、28日後に病理組織学的検索を行った。【結果】1.マクロファージ浸潤の抑制効果:内膜・中膜のマクロファージ比率(RAM11陽性細胞数/全細胞数)は、7ND群(28日後、25±5%、22±0.1%)で、PBS群(28日後、33±0.3%、51±0.1%)と比較して有意に少なかった。2.新生内膜抑制効果:内膜面積はPBS群0.65±0.02mm2、7ND群0.39±0.04mm2であり、と7ND群で有意に小さく内膜肥厚が抑制されていた。内膜/中膜比も7ND群で有意に小さかった(7ND群=0.2±0.2、PBS群:0.9±0.2)。3.陰性リモデリング抑制効果:エコーでの血管内径は、7ND群2.1±0.1mm、PBS群1.7±0.1mmであり、7ND群でPBS群に比し有意に広かった。【考察】変異型MCP-1遺伝子導入によるMCP-1活性の抑制により、高コレステロール血症ウサギのバルーン傷害後血管狭窄モデルの内膜肥厚ならびに陰性リモデリングは著明に抑制され、狭窄が防止された。本研究により、バルーン傷害後血管狭窄反応の病態においてMCP-1が必須の役割を果たすことが明らかとなった。この新規遺伝子治療がヒト血管形成術後再狭窄の遺伝子治療法となりうることが示唆された。
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