研究概要 |
主な本年度の実績概要を以下に報告する。 1.新規遺伝子導入システム確立に向けたSeVベクターの生物学的特性に関する研究:1)β-gal,luciferaseとともにVEGF,FGF-2,ecNOSなどの遺伝子を搭載した組み換え型SeVの血管壁構成細胞へのin vitro,in vivo導入ならびに発現効率はAdeno virusベクターに比べて遜色なく良好であり、加えて短時間(10分以内)の接触で十分な導入が可能であった。2)小動物血管壁では、内腔からの投与で内皮細胞のみならず中膜平滑筋細胞まで遺伝子導入が可能であるが、ヒト大腿静脈瘤症例由来の静脈壁では硬化内膜により中膜平滑筋細胞への導入は強く阻害され、今後、目的に応じた導入経路の検討が必要であることが判明した。 2.虚血組織における血管新生の分子機構:1)急性下肢虚血動物モデルでの外来性VEGF,FGF-2による側副血行路発達促進効果の検討:SeVベクターを用いてVEGF,FGF-2遺伝子を虚血筋組織に導入すると、FGF-2遺伝子導入により内因性VEGF,HGF発現が亢進し、組織学的検索ならびに血流測定により新生血管の増加と側副血行路形成が証明でき、明らかな下肢虚血の改善が誘導された。VEGF遺伝子導入では明らかな下肢虚血の改善は認められなかった。2)血管新生因子(VEGF,HGF,FGF-2)は相互に関連しあって内皮細胞に作用して血管新生を促進していること、とくにin vivoにおける最終作用因子はVEGFであるが、血流増加にはFGF-2など他の血管新生因子の協調作用が不可欠であることを明らかにした。 3.びまん性内膜肥厚(DIT)は、動脈硬化病変の発生素地の一つとなりうることをヒト全身動脈の形態計測法による組織学的検索により明らかにした。 4.組み換え型SeVの安全性を確認する為に、レポーター遺伝子・SeVのラット、マウスの筋肉組織、血管壁、気道に導入しその後の局所炎症所見、血中ならびに他臓器へのSeVゲノム分布、また血中サイトカイン変動などについての検索を進行中である。 現在、「下肢虚血に対するSeV-FGF2遺伝子導入による血管新生療法」を学内倫理委員会に申請するべく準備中である。
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