研究概要 |
O-GlcNAc糖鎖は、蛋白のセリンやスレオニンのアミノ酸残基(Ser/Thr)に結合する糖鎖であり、UDP-GlcNAc-β-N-acetylglucosaminyltransferase(O-GlcNAc transferase)によって糖付加が行われると考えられている。この糖鎖の付加は細胞内蛋白(核蛋白、細胞質存在蛋白)のみに認められ、生命現象に重要な役目を担っていることが推測される。我々は、コレクチンの糖結合活性が上記の糖鎖とオーバーラップすることから、コレクチンのモチーフを利用して新規コレクチンのクローニングを企画し、細胞内糖鎖の機能を探ろうと考えた。 1)我々は、膜タイプの新規コレクチンを想定し、その遺伝子クローニングを試み、本年度候補遺伝子の一つCL-P1遺伝子のクローニングに成功した。さらにCL-P1遺伝子を大腸菌で発現させ、抗体作成を行い、本レクチンが膜型のレクチンであることを証明した(論文投稿中)。その後本レクチンのマウスホモローグをクローニングした。本レクチン遺伝子は非常に遺伝子保存率が高く、生体にとって重要な働きをしていることが示唆された。 2)レクチン遺伝子の機能を探るには、生体での役割探索が必須であり、いろんな大学、病院との共同研究をおこなっている。始めに大阪某市における健康診断において、ボランテアでの日本人正常値の検討を行った。約500人におけるMBL血中濃度では1-2mg/mlであり、遺伝子多型のアレル頻度は0.18であった(医学のあゆみ2000)。また北大第一内科との共同研究で、自己免疫性疾患とコレクチン遺伝子多型について検索を行った。その結果、慢性ウイルス感染症ではC型肝炎にて本レクチン(MBL)の血中濃度が高い患者は予後が良い事が推測された(Scan.J.Gasteroentelogy,2000)。さらに自己免疫性疾患(SLE,RA,Sjogren syndrome)では、本遺伝子の変異が高いことがみられた。今後本レクチンの測定が自己免疫性疾患のマーカーや予後判定の材料に使える可能性が考えられた。
|