研究概要 |
われわれはこれまでに、白血球接着分子L-セレクチンとCD44に着目し、その機能解析およびリガンドの探索を行ってきた。その結果、CD44の新規リガンドとしてセルグリシンを同定するとともに、腎においてL-セレクチンのリガンドが遠位尿細管上皮細胞に局在することを報告した。さらに、ラット尿管結紮モデルにおいて腎間質への白血球浸潤が抗L-セレクチン抗体により強く抑制されることから、腎組織内への白血球浸潤にはL-セレクチンとそのリガンドの相互作用が重要な役割を果たすと考えられた(J.Pathol.,188:93,'99)。次に、腎尿細管由来細胞株ACHNの培養上清よりL-セレクチン・リガンドの精製を行った結果、既知のリガンドとは異なるプロテオグリカン・バーシカンを新たなL-セレクチンリガンドとして同定した(Int.Immunol.,11:393,'99)。またバーシカンは、L-セレクチン以外にもCD44やケモカインを含む種々の炎症細胞浸潤関連分子とin vitroにおいて特異的に結合した(J.Biol.Chem.275:35448,2000,ibid 276:5228,2001)。これらの結果は、バーシカンが炎症巣における白血球浸潤に関与する可能性を示唆する。さらにわれわれは、バーシカンとL-、P-セレクチンおよびCD44の結合における硫酸化糖鎖の関与について検討を行った。その結果、L-、P-セレクチンとの結合には特定の硫酸化糖鎖が必須であるが、CD44との結合には硫酸化糖鎖は必須ではないことが示唆された(未発表)。現在、L-、P-セレクチンおよびCD44との結合に関与する糖鎖の構造解析を進めている。
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