研究概要 |
本研究の目的は、神経の可塑的変化に連動して発現上昇を示したST3Gal IVの特異的基質の探索である。以前より、成熟マウス脳・海馬から7種のシアル酸転移酵素(SY3Gml I-IV,ST6Gal I,ST6GalNAc II,ST8Sia IV)を単離し、神経可塑性モデル・キンドリングマウス(けいれん閾値以下の電気刺激を毎日与えることにより作成)・脳において、それぞれの発現変動をRI-in situ hybridization組織化学法及び、半定量RT-PCR法を用いて検討していた。その結果、可塑的変化誘導後の海馬において、ST3Gal IV,ST6GalNAc II mRNAsが発現上昇を、ST3Gal I,ST8Sia IVが発現減少を示し、ST3Gal II,III,ST6Gal Iは変化を示さなかった(J.Neruochem.2001 in press)。さらに視床において、ST3Gal IV mRNAは、キンドリングのステージの進行に伴って発現上昇を示した[5.3倍(ANOVA;p<0.0001)]。そこで、ST3Gal IV mRNAの発現上昇を示した視床、及びその神経核群の投射先である大脳皮質を、キンドリング及びコントロールマウス脳より分離し、蛋白質を抽出した。ST3Gal IVはII型(Gal b1-4 GlcNAc)糖鎖に強いシアル酸転移活性を示すことから、II型糖鎖構造を認識するレクチン(Macckia amurensis:MAA)を用いてレクチン沈降後、2次元電気泳動により蛋白質を分離し、銀染色法によりスポットを検出した。キンドリング後、視床では、2種、大脳皮質では4種の蛋白質が有為に増加していた。以上の結果より、神経の可塑的変化に連動したST3Gal IVの発現上昇とそれに伴うII型糖鎖付加・蛋白質の存在が示唆された。
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