研究概要 |
1..DsrD(dissimilatory sulfite reductase D)タンパク質とDNA(RNA)との相互作用解明 DsrDタンパク質の3.5ÅにおけるX線結晶解析の結果,その主鎖の折れたたみ構造のパターンはADAR1のZαドメインの構造と酷似していることが分かった.このZαドメインは,Z-DNAとの複合体として結晶解析されていることから,本DsrDもDNAあるいはRNAと相互作用するものと考えられた.今年度,さらに高分解能(1.5Å)の解析に成功し,側鎖も含めた全構造を解明した.その結果,核酸と相互作用すると考えられる部分の表面構造はZαドメインの構造と似ているものの,その表面電荷のパターンは異なっていることが判明した.また,高分解能の精密化により分子表面にモノマーあたり3-4個の硫酸イオンが同定された. 2.ヒドロゲナーゼの水素活性化機構の解明 ヒドロゲナーゼの活性阻害剤・CO分子結合型の超高分解能X線結晶解析に成功した.CO分子はNi原子に結合しており、生体分子中のNi原子とCO分子の結合状態をX線解析で示したのは本研究が最初である.また,水素活性化にNi原子のひとつのシステイン配位子が重要であることが明らかになった. 3.細胞分化に関与するAxinタンパク質の構造化学 AxinはWntシグナル伝達経路を負に制御していると考えられている.この分子はβ-カテニン等多くのタンパク質と結合し,シグナル伝達の足場的な役割を持つことからその精製・純品化が課題であった.本年度は,Axin中に見いだされているDIXドメインの精製法の開発に成功し,現在結晶化実験にはいっている.
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