研究概要 |
本研究は,酵母の減数分裂を開始する遺伝子郡の相互作用と転写抑制機構ならびにその転写抑制因子の構造を明らかにすることである。本年度の研究成果は下記の通りである。 (1)Ume6pによる転写抑制機構およびヌクレオソーム構造のDNA配列依存性:酵母の減数分裂を開始するマスター遺伝子IME1の発現を抑制するRmelpについては既に報告した.Ume6pは,IME1に続いて下流の減数分裂の制御に関与する遺伝子IME2のrepressorである,Ume6p-Rpd3p/Sin4p系による転写抑制を調べた結果,Ume6pによるIME2の発現抑制は,Rpd3pによる脱アセチル化機構のみからは解釈できず,Rpd3p/Sin4pが活性化因子とpol IIとの結合を阻害するという機構を示唆する結果を得た(論文準備中).また,ヌクレオソーム構造の安定性はDNA配列に強く依存することを実証した(shimizu et al.,EMBOJ.,2000). (2)ブロモドメインの構造解析:このドメインは一般に溶解度が低く,長い間その試料調製の問題を抱えてきた.そのため,酵母に存在する5種の蛋白質のブロモドメインをクローニングし,それらの発現系を構築した.そのうち,Sthlpのドメインが溶解性示したが,多量体として存在するためか,NMRの解析を難しくしている,一方,SWI/SNF2のブロモドメインはそれ自身は溶解性が低いが,CまたはN端側の領域を含むことで溶解度が飛躍的に増大することが分かった.C末端側を含むブロモドメインについて多次元NMRの測定と解析を進めている.(第23回日本分子生物学会年会,2000,神戸). (3)大腸菌由来のYhhP蛋白質の構造解析:YhhP蛋白質は原核細胞に普遍的に存在し,細胞分裂に関与しているが,その詳細な機能についてはまだ明らかではない.この蛋白質の構造は,4本のβ鎖と2本のα-helixからなるα/β sandwitch構造をとることが分かった,さらに,構造の相同性に関するデータベースの検索から,転写開始因子であるIF3のC末ドメインIF3Cに対して構造的に,また表面電荷ポテンシャルにおいて相同性が高いことを明らかにした,YhhPはRNA結合蛋白質である可能性が高い(Katoh et al.,J.M.B.,2000).
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