研究概要 |
1)相似変換によりポテンシャルの発散を取り除かれた有効ハミルトニアンを用いた分子軌道プログラムの開発を行った。相関因子の指数部は、短距離でKatoのカスプ条件を満たし、長距離では急速に減衰する性質をもっている。この様な相関因子を用いる事により、短距離相関の記述に必要な高い角運動量指数を含む基底関数が露には必要と無くなり、相関誤差を大幅に減少させる事が出来るというのが本手法の本質である。昨年度開発された擬軌道と双直交基底による二次の摂動論に加え、本年度は、線形化された短参照結合クラスター理論と多参照摂動理論のプログラム開発を行った。代表的な10電子系(CH_4,NH_3,H_2O,HF,Ne)についても同様の計算を行った所、全ての場合に全エネルギーで2-3kcal/mol誤差内の結果を得る事が出来た。 2)角度依存性を含む分子内相関関数を導入した部分波展開による積分方程式理論により相互作用点の理論と分子OZ方程式の関係が明らかになり、角度関数を球展開で打ち切ったと見なされるRISM理論に対しても妥当な自由エネルギー標識が導かれた。本年度は、この部分波基底を用いた積分方程式理論のエンジンとなる分子内相関関数の球面調和関数展開、球ベッセル変換および各相互作用点からの寄与の各運動量合成のプログラムを開発し、低密度極限における原子-分子相関関数の計算に応用した。各種アルコール、炭化水素、ジペプチド等に応用し、非常に高速に厳密な相関関数を計算出来る事が示された。
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