ウグイ産卵成熟期(6月)に捕獲したオス・メスを砂利石を敷いた人工水路に収容すると、一部の個体で産卵成熟の状態になる(オスでは膀胱の尿量が増え、メスでは卵成熟・抱卵して、誘引フェロモン感受性が高くなる)。このときにオスはメス誘引フェロモンを放出する。そこで、成熟したオスから採集した尿を用いて、室内試験水槽に収容した成熟メスの誘引行動を観察した。誘引活性を指標にして誘引フェロモンの分画を行った。 6月に千曲川水系で捕獲したウグイのオス・メスを砂利石を敷き詰めた人工水路に収容し、河川水を流した。収容したウグイのうち、成熟したオスから尿を採集した。フェロモン感受性の高いことが知られている卵成熟・抱卵したメスを触診で判断して選抜した。室内試験水槽はパーティションで3室に区切り、魚が通り抜けられるような穴を開けた。両外側の部屋に水を注入、中央の部屋から排水して「水の流れ」をつくった。中央の部屋にメスを収容して、どちらか一方の外側の部屋にオス尿を添加したときの誘引活性を調べたところ、メスが鋭敏な誘引活性を示した。オス(約30匹分)の尿9.4mLを凍結乾燥して乾燥物29.0mgを得た。凍結乾燥物を脱イオン交換水に溶解してゲルろ過クロマトグラフィーに供し、脱イオン交換水で溶出した。各画分を215nmでモニターしたところ、最大極大吸収をもつ画分に強い誘引活性が観察された。活性画分を集め、弱陽イオン交換樹脂に供したが、活性画分はそのまま通り抜けた。続いて強陽イオン交換樹脂に供したが、河川水温が上昇して卵の退縮が始まり、メスの産卵時期が終了してしまったため、これ以上の成果をあげることができなかった。その後、オス尿中に含まれる成分を精査したが、単離には至らなかった。
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