研究概要 |
珊瑚礁に群生するスナギンチャクから単離されたゾアンタミンは、抗炎症活性を有する海産アルカロイドである。最近、同族のノルゾアンタミンが、骨粗鬆症モデルマウスに対して優れた骨吸収抑制活性を示し、かつ、副作用がほとんどないことが報告された。骨に対しての作用メカニズムは不明だが、極めて興味深い。 収束的な全合成を達成すべく、まず、A環部とC環部を立体選択的に連結した。鍵工程となる溝呂木-Heck反応は、反応点近傍の立体障害のため基質の微妙な改変が重要であった。検討の末、10位をMOM基で保護すれば、閉環反応が進行することがわかった。ヨウ化サマリウムで21位をエピ化させながら還元後、19位メチルを導入し、ABC環骨格を合成した。更にごく最近、シクロプロパン化により、9位の構築に成功した。これにより、難関であるC環の近接四級炭素(9,12,22位)の構築を達成できた。 また、不斉Diels-Alder反応によりC環部の構築を検討した。モレキュラーシーブの添加により、同一の不斉チタン錯体から付加体の両鏡像体を作り分けられることを見出した。モレキュラーシーブは系内に発生するHClを捕捉して、チタン錯体の構造を変化させる可能性が高いことが分かった。 上村らから供与されたゾアンタミン類を用いて、エストロゲン受容体に結合する蛍光性リガンドとの競争結合阻害実験を検討した。蛍光偏光法での測定から、エストロゲン受容体(ヒトα及びβ)へのゾアンタミン類塩酸塩の親和性は低いことが分かった。これは、エストラジオール等の投与で問題となる子宮重量増加等の副作用が、ゾアンタミン類塩酸塩では起こらないことと合致する。
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