研究概要 |
プリムネシンは、ハプト藻Prymnesium parvumが生産する赤潮原因毒であり、分子量2000にも及ぶ大型天然物である。連続した1,6-ジオキサデカリン環、ポリオール部分、糖、長鎖共役ポリエンポリイン構造、アミノ基、塩素など多様な官能基を含む新規なポリエーテル化合物であり、植物サポニンの1000倍以上という極めて強力な溶血活性のほか様々な生物活性を示すことから注目を集めている。 本研究では、プリムネシンの完全立体構造決定の一環として、HI/JK環部モデル化合物を合成し、天然物と^1H,^<13>C NMRケミカルシフト値を比較することにより推定立体構造の確認を行うことを目的とした。 モデル化合物を用いて6員環エーテル上に立体選択的に塩素原子を導入するための反応条件の検討を行った結果、クロロメタンスルホニルオキシ基を脱離基としてBu_4NClを用いる求核置換反応によるアキシアル塩素の導入法を見出した。 トリ-O-アセチル-D-グルカールを出発原料として11工程でH環に相当するアセチレンを合成した。一方、文献既知化合物から立体選択的アリル化反応を経て15工程でJK環に相当するラクトンを合成した。リチウムアセチリドのラクトンへの付加とヘミケタールのEt_3SiH還元によるカップリング反応の後、保護基の変換、三重結合の部分還元、得られたシスオレフィンのOsO_4酸化、続くジオールの酸化、TBS基の除去をへて得られるヘミケタールの還元によりI環の構築を行い、HI/JK環部骨格の合成に成功した。
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