研究概要 |
発がんプロモーターのターゲットは、細胞内情報伝達の鍵酵素であるプロテインキナーゼC(PKC)と考えられている。しかし、PKCを活性化する化合物がすべて発がんプロモーションを引き起こすわけではなく、PKCの活性化だけでは発がんプロモーションを説明できない。本研究者は、PKCが多くのアイソザイムよりなり、それぞれに複数の発がんプロモーター結合部位(ClA、ClBドメイン)が存在することがその大きな理由と考えている。本研究の目的は、天然発がんプロモーターをリードとして、PKCアイソザイムあるいはあるアイソザイムの特定のClドメイン選択的な薬剤を開発することにある。 本研究者らは最近、全PKCアイソザイム(PKCα,β,γ,δ,ε,η,θ)のClAおよびClBを個別に化学合成し、これらのホルボールエステル(PDBu)に対する解離定数を正確に決定することに成功した。そこで、これらのペプチドライブラリーと[^3H]PDBuを用いた結合阻害試験によって、いくつかの天然発がんプロモーターの全PKCアイソザイムClドメインに対する結合定数(K_i)を測定した。その結果、インドールアルカロイド系の発がんプロモーターであるインドラクタムVが、novel PKC(δ,ε,η,θ)のClBドメインに選択的に結合することを見いだした。 さらに、インドラクタムVのチオアミド誘導体を合成したところ、2はカルシウム依存性のconventional PKC(α,β,γ)に対して1と同様の結合活性を示したが、novcl PKC(δ,ε,η,θ)に対する結合能は約10倍弱かった。本結果は、novcl PKCがconventional PKCと比べて1のアミドカルボニル基を強く認識していることを示唆している。本知見は、PKCアイソザイム選択的な薬剤開発を行う上で、有用な指針となる。
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