研究概要 |
この数年アコヤガイの赤化に続いて生じる大量死が問題となっているが,これまでに報告のあるプランクトン「ヘテロカプサ」種に起因するものとは異なっている.この大量死の原因と,この現象に関わる物質の解明を目指して研究を展開した. まず,アコヤガイの赤化現象に注目して分離を進め,赤色色素alloxanthinを単離した.しかし,この物質は稚貝に対して影響を与えないため,大量死の原因物質ではなく,結果として体内に蓄積されたものと推定した.さらに病貝の観察を行なった結果,血リンパ球の崩壊が観測された.そこで血球の崩壊活性と,稚貝に対する致死活性を調査した.また,活性試験に用いる稚貝は,共同研究者により今年度水温を制御することで,通年で同じサイズの個体を得ることに成功した.活性を指標として病貝抽出物の分画を進めた結果,殺稚貝活性物質の一つとして2,2-bis(4-hydroxyphenyl)propaneを得ている.また,この物質以外にも精製を行なっている.さらに水層の分画を進めた結果,有機層から得られた活性画分と同一の極性画分に活性が集中している事を確認した.また病貝には健康貝と比較して多量に蓄積される白色結晶を確認した.この結晶を精製した結果,これまでにコレステロール及びその類縁化合物4種を確認している. また,今回の大量死では,死後に腐敗臭がしないことも特徴としてあげられる.これまでに,病貝抽出物抽出物には,嫌気性菌に対して,1ppm程度で成長を阻害する活性を確認した.さらに,養殖現場では海が荒れた後には海水が白濁し,その後に貝の症状が悪化することが観察されている.これまでに,愛媛県南予地方の養殖地周辺にて採集した白い潮の濃縮物が殺稚貝活性を示すことを確認しており,その精製と共に他の海水との比較を進めている.
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