研究概要 |
天然に最も豊富に存在するサポニンであるacyl基がトリテルペンに結合したタイプ(acylated polyhydroxyoleane 3-Ο-monodesmoside)とトリテルペンoleanolic acidがアグリコンのタイプ(oleanolic acid 3-Ο-monodesmoside)について,活性と構造および作用機作を検討した。 1)代表的なacylated polyhydroxyoleane 3-Ο-monodesmoside型サポニンであるescin類に,マウスでの栄養および非栄養性食餌における顕著な胃排出能抑制作用,炭素末輸送能試験での小腸内輸送能亢進作用およびマグネシウム吸収促進作用のあることを明らかにした。さらに,これらの顕著な活性発現にはトリテルペン部に結合したangeloyl基やtigloyl基などのアシル基の存在が必須であるなどの構造と活性に関する知見を得た。また,その作用機作として,マウスを用いた実験において,カテコールアミン枯渇剤やドーパミン拮抗薬およびプロスタグランジン合成阻害剤を用いた実験結果から,escin類の胃排出能抑制作用にはドーパミンがメディエーターとして関与しており,ドーパミン_2受容体刺激によってプロスタグランジン類を遊離させ,最終的に胃排出能を抑制させることを明らかにした。一方,escin類の小腸内輸送能亢進作用にはドーパミンは関与しておらず,セロトニン合成阻害剤およびセロトニン拮抗薬を用いた実験結果から,セロトニンがメディエーターとして重要であることが判明した。さらにプロスタグランジン合成阻害剤や一酸化窒素合成阻害剤を併用した実験結果から,セロトニン_2受容体刺激によって一酸化窒素およびプロスタグランジン類を遊離させ,最終的に小腸内輸送能を亢進させることが明らかになった。Escin類のマグネシウム吸収促進作用には一酸化窒素が関与することを証明した。 2)Oleanolic acid 3-Ο-monodesmoside型サポニンであるmomordin Icについて,糖吸収抑制活性および胃排出能抑制活性の他に小腸内輸送能亢進作用のあることを見出すとともに,その作用機作としてセロトニンが関与しており,セロトニン_2受容体刺激によってプロスタグランジン類を遊離させることによって作用を発現することが推察された。
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