研究概要 |
クォーク・レプトンの存在様式や質量階層性、とくにニュートリノ振動を説明する模型を構築することを目的として、余次元時空における対称性の破れの機構と、それが誘導する質量スペクトルについて研究を行った。2次元球面を余次元として持つ時空の上で、球面がある臨界半径より大きくなると、モノポールが球面上にトポロジカル欠陥を生じせしめ、球面の回転対称性の自発的破れを引き起こすことを見つけた。臨界半径を厳密に求め、モノポール数が1,2,3の場合について真空の古典解を近似的に求めた。モノポール数が1,2のときはU(1)×SU(2)からU(1)への対称性の破れが起こり、これに伴い3個の南部ゴールドストンボソンが生じることを示した。さらにモノポール数が3以上になると、連続回転対称性が離散対称性まで落ちることを示した。また、物質場の数を増やすことにより、CやPなどの離散対称性が破れる模型も発見し、これらを分類した。SU(N)フレーバーの対称性の基本表現に属するヒッグス場は、通常はSU(N)からSU(N-1)への破れを引き起こすのだが、モノポール背景場のもとではいちどきにSU(2)までの破れを引き起こすという新しい対称性の破れのパターンも見出した。これらの結果は、余次元上の場の非摂動的なダイナミクスに関して新しい知見を与え、素粒子模型の構築に新たな可能性を与えるものである。さらに、コンパクトな空間の境界条件によりフレーバー混合が起こるような模型を提唱した。また、トーラス中の磁場が並進対称性の破れを引き起こすことも発見し、群論的・表現論的な解析を行った。
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