研究概要 |
PD-1受容体は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する55kDのI型の膜蛋白質で、その細胞質領域には免疫反応を負に制御するとされるITIM motifが存在する。一方、T細胞のホメオスタシスに影響を与えることが知られているCTL-associated antigen 4(CTLA-4)の構造がPD-1に似ていることに基づき、我々はPD-1のリガンド分子はCTIA-4のリガンドであるB7-1,B7-2に似ていると仮説を立て、EST data baseのサーチを行った。その結果、ヒト胎盤由来のcDNAライブラリーより、290アミノ酸よりなるヒトPD-1リガンド(PD-L1)を単離した。ヒトPD-L1は細胞外にIgV,IgCドメインをそれぞれ一つづつ持ち膜貫通領域に引き続き、短い細胞内領域を持つ分子である。試験管内の実験系において、PD-L1は実際にPD-1を介して、刺激をうけたT細胞の分裂をdosedependentに抑制することも示された。 我々は最近PD-1欠損マウスがBALB/Cの遺伝的背景において自己免疫性拡張型心筋症を起こすことを見いだした。PD-L1の発現は抗原提示細胞に加え、心臓を含む末梢臓器にも強く発現されていることより、この結果は心筋において発現されているPD-L1が自己抗原に対し、活性化したTもしくはB細胞の抑制に働いているという可能性を示唆し、PD-1欠損マウスに認められる自己免疫性拡張型心筋症の発症にPD-L1が関与する可能性が高いと考えられる。現在我々は心筋上の自己抗原および病気の発症に関与する免疫細胞の同定を行っている。
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