申請者は今までに、シロイヌナズナのT-DNAタギングラインをスクリーニングし、病原微生物非存在下で細胞死を発現する細胞死突然変異体(lin:lesion initiation mutant)を単離してきている。現在これら原因遺伝子のクローニングを進めており、LIN1遺伝子は第一染色体(BACクローン(T5A14)に相当)に存在することを明らかにした。また、LIN2遺伝子を、第一染色体上のcoproporphyrinogen III oxidase(CPO)遺伝子と同定した。さらに、lin3変異体では、T-DNAの挿入位置を第一染色体(BACクローン(F3I6)に相当)に同定した。 lin1変異体は、短日条件下で葉および花茎に細胞死を発現し、長日条件下ではその発現は抑制されていた。lin2変異体は、短日・長日両条件下で葉に細胞死を発現したが、長日条件下でその発現がより顕著であり、莢においても細胞死を発現した。lin3変異体は、短日・長日両条件下で葉に細胞死を発現した。lin1とlin2変異体は劣性突然変異体で、lin3変異体は優性突然変異体であることから、野生株において、LIN1とLIN2は細胞死発現を抑制し、LIN3は促進していると考えられた。 これら細胞死突然変異体では、細胞死の発現に伴い、葉の細胞においてカロースや自家蛍光物質の蓄積が見られるとともに、防御遺伝子(PR-1)の発現も誘導されていたことから、過敏感細胞死発現時と類似した現象が誘導されてることが明らかになった。これらの結果から、lin1、lin2およびlin3変異体における細胞死の発現は、植物の抵抗性反応で誘導される過敏感細胞死と同様な機能を有していると考えられた。つまり、これら細胞死突然変異体の解析を通して、植物の過敏感細胞死発現機構を明らかにすることができると期待された。
|