研究概要 |
研究目的 高等植物における情報伝達物質としての一酸化窒素(NO)の役割を,植物-病原微生物の相互作用をモデル実験系としながら,解明する事を最終目的とする. (1)可溶性グアニル酸シクラーゼタンパク(sGC;動物組織におけるNO受容体として機能する)のNO結合型立体構造を認識するモノクローナル抗体(すでに確立)を利用し,NO産生を細胞・組織レベルで解析するためのNO免疫化学的定量法の開発する.(2)培養細胞系において植物の防御応答とNO産生を解析する.本実験では,ナス青枯れ病菌(Ralstonia solanacearum)のpopA遺伝子産物を大腸菌で発現させ,タンパク性エリシターとして用いる.タバコ植物に対して親和性・非親和性のそれぞれの菌株より得たpopA遺伝子の全翻訳領域を発現させ,PopAタンパク機能(過敏感反応誘導)とタンパク構造の相関を解明するとともに,得られたPopAタンパクをタバコ植物体および培養細胞系にて用いる精製エリシターとする. <結果>(1)NOの免疫化学的定量に利用する組換えsGCタンパクを調製した.まずラット脳cDNAライブラリーより,sGCαサブユニットおよびsGCβサブユニットをコードするcDNAを単離した.それぞれのcDNAを,バキュロウイルス発現系を用い,昆虫細胞で発現させたところ,組換えsGCタンパクを得ることができた.細胞粗抽出液において組換えsGCタンパクは,NO供与体の添加によって活性化された.現在,sGCタンパクの大量発現のための培養条件を最適化している.(2)PopAタンパクを大腸菌で発現させた.得られた組換えPopAタンパクは,タバコ葉に過敏感反応を誘導した.今後,PopA受容体タンパクの同定と遺伝子クローニングを目的にして,非親和性菌と親和性菌由来のPopAタンパク一次構造とHR誘導能の構造活性相関を明らかにする.
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