研究課題/領域番号 |
12053257
|
研究種目 |
特定領域研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
|
研究機関 | 佐賀医科大学 |
研究代表者 |
吉村 恵 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (10140641)
|
研究分担者 |
古江 秀昌 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (20304884)
熊本 栄一 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (60136603)
|
研究期間 (年度) |
2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2000年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
|
キーワード | 脊髄後角 / 脊髄スライス / パッチクランプ / 可塑性 / 軸索発芽 / 痛み / 慢性疼痛 / 痛覚過敏 |
研究概要 |
生後発達と末梢神経損傷に伴う脊髄内感覚系の可塑的変化を明らかにするため、脊髄スライスとin vivo標本からパッチクランプ記録を行い、膠様質細胞への末梢入力の変化を調べた。成熟ラット(7週齢)のスライス標本では、Aδ線維誘起の単シナプス性EPSCが約50%の細胞に、C線維誘起のEPSCが20%に、残りの30%はAδおよびC線維の入力を受けていた。一方、Aβ線維入力はわずかの細胞にのみ見られ、また、ほとんどは多シナプス性であった。ところが、3週齢ラットでは、C線維からの入力が少なく、Aβ線維からの単シナプス性入力を受けている細胞が著明に多かった。これは解剖学的な観察、すなわち、先ず最初にAβ線維が膠様質に侵入する。発達に伴ないC線維が膠様質に侵入しシナプス結合する。そして、Aβ線維が退縮する結果と一致する。さらに、このような可塑的変化が、末梢神経損傷時にも誘発されるかを、坐骨神経切断モデルラットを用いて検討した。モデルラットでは、膠様質細胞へのC線維入力が減少し、介在ニューロンを介するAβ線維からの入力が著明に増加した。この結果は、坐骨神経切断によりC線維が脱落した結果Aβ線維が軸索発芽を起こし、膠様質に非侵害性の感覚情報を伝えるようになる事を示唆する。膠様質が痛覚伝達と密接に関与している事から、触刺激によって痛みが誘発される、いわゆるallodyniaの発生機序の一つである可能性がある。次に、この膠様質に進入したAβ線維が坐骨神経切断端より末梢に伸びた再生線維によるものかを、in vivoパッチクランプ法を用いて検討した。しかし、切断端より末梢側の刺激では全く応答が見られなかった。以上の結果から、末梢神経損傷時には、感覚回路が可塑的な変化を起こし、幼弱期のそれと類似の回路を再構築する。これは、一種の代償機能か再生過程を示しているのかもしれない。しかし、それが正常時のものとは何らかの点において異なるため、神経因性疼痛などの治療抵抗性の慢性疼痛を引き起こしている可能性が考えられた。
|