研究課題
特定領域研究
サイトカイニンは、組織培養下では細胞の増殖に必須であり、細胞分化にも重要な働きを持つ重要な調節因子と考えられてきた。昨年度の研究において、シロイヌナズナに存在する3つのサイトカイニン受容体を破壊した変異体は、サイトカイニンに応答しないことを示した。このことは、基本的に三つのサイトカイニン受容体だけによってサイトカイニンが受容されていることを示すと共に、サイトカイニンは実際に植物の成長に重要な役割を果たしていることを示している。本年度は、サイトカイニン受容体からの情報伝達の仕組みについて調べた。サイトカイニンの受容体はヒスチジンキナーゼであり、サイトカイニンにより活性化されるとATPのリン酸基をリン酸基転移メディエーター(AHP1-AHP5)に転移する活性をもつと考えられている。本年度は、サイトカイニン受容体の活性をin vitroで調べる実験系を開発した。baculovirusを用いた発現系を用いることにより昆虫細胞SF9でCRE1を発現させ、SF9の膜画分を実験に用いた。[γ32P]ATP、CRE1を含む膜画分、及び精製リコンビナトAHP1をインキュベートすると、サイトカイニン存在下でのみAHP1はリン酸化され、CRE1はサイトカイニン依存的にリン酸基転移活性を持つことが示された。また、サイトカイニン非存在下では、CRE1はAHP1に対して脱リン酸化酵素活性を持つ。サイトカイニンを結合出来ない突然変異体であるCRE1(T278I)は、常に脱リン酸化活性を持っていた。正常なCRE1遺伝子を持たない植物中では、この変異体遺伝子はサイトカイニン応答に抑制的に働く。これらのことを総合すると、植物の中では、リン酸リレー系は双方向リン酸リレーネットワークを形成しており、サイトカイニン受容体は、リン酸ロードの状態を正と負に制御していると考えられる。
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Proc Natl Acad Sci U S A 101
ページ: 8821-8826