[目的]脳は機能的、位置的に異なる細胞集団、組織からなる。また免疫系は分化段階において異なる性質をもった細胞群に分けることができる。これらの細胞集団における機能分担を明らかにすることを目的として、極微少細胞集団中の遺伝子発現頻度解析を行い、遺伝子からタンパク質機能の解明に結びつける。 [方法]マイクロアレイもしくはマクロアレイによってマウスの脳の各部位を採取し、脳の特定領域での遺伝子発現を解析し、再アレイ化する。マイクロダイセクションによって極微少細胞集団の取り出し、高感度遺伝子発現頻度解析を行う。厳密な定量性が要求されるため、まずプローブの固定化を均一にするとともに、内部コントロールを用いた定量化を試みる。 [結果] 1.極微量組織を用いた脳特異的遺伝子発現解析クローンの選択 マウス脳由来cDNA5000個を用いたマイクロアレイを作製した。解剖学的に特徴のある脳部位、機能的に分類されている領域に着目して細胞を切り出し、遺伝子発現頻度解析を行った。3ヶ月齢のP53のノックアウトマウスを用いた。p53-/- ♂マウスbrain(大脳皮質部)とp53+/+ ♂マウスbrain(大脳皮質部)を切り出し比較した結果、複数のp53の下流で調節を受けている遺伝子を見いだした。その中にGタンパク質にカップルしたオーファン受容体が見つかった。その機能について検討している。 2.高感度遺伝子発現頻度解析システムの構築 p53遺伝子の一部の配列を複数選択し、これに相当するオリゴヌクレオチドを合成し、固定化した電極を用いて、電気化学的にハイブリド形成を検出し、測定電流応答の差が発現量ともっとも相関する条件を得た。また通常のDNAマイクロアレイ法を用いてmRNA量の微量測定を行うため、DNAを用いたモデル実験を行い、細胞あたり2コピーから10コピーまでの定量性が得られるシステムを開発した。
|