我々の開発したDNA型RNAiの、ハエ個体での使用上での有効性、問題点を洗い出すために、変異体表現型の分かっている遺伝子について検討を始めた。RNAiコンストラクトを作製中の遺伝子は55種類、ベクターコンストラクトは122である。既に38遺伝子/88コンストラクトを作成してハエに導入し、そのうち68コンストラクトについては形質転換系統を合計586系統樹立した。これらのうち、5遺伝子を用いた実験がら、IR-cDNA断片を強制発現すると、表現型においてもまたmRNA量においても、loss-of-function変異をGal4driver依存的に誘導できること、IRは、head to headにアレンジした方がより効果的であること、及びORFの方がUTRよりも効果が高いこと、が判明した。ORF断片の長さ500bp程度では、ほとんど何等の問題も生じなかった。染色体上の位置やコピー数がRNAi効果に影響を及ぼすかもしれない。この問題点は、transgeneに一般に関わる問題ではあるが、ゲノム網羅的な高効率RNAi遺伝子機能破壊系統作成を考えるときは、特に重要な検討事項となる。弱い表現型を示すemc遺伝子IRとdppGal4を同じ染色体上に組み合わせた系統を作成し、これを染色体欠失系統に交配した。74の第3染色体欠失を調べると、およそ1割で表現型の増強/抑圧が観察され、多数のエンハンサー・サプレッサーの存在の可能性が示唆された。他の遺伝子についても同様の解析をおこない、共通する染色体領域を特定することによりこれらの遺伝子を特定したい。このようなRNAiのmodifier screenの試みをさらに拡げ、他種生物のRNAi関連遺伝子のハエでのcounterpartの機能解析の解析も進め、ハエでのRNAiの作用機構を解明したい。核から細胞質へのdsRNAの移行を促進するためにIRの間にイントロンを導入したSCベクターを作成した。現在それをハエに戻している。
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