硬骨魚類であるゼブラフィッシュやメダカは幼生期まで透明で、顕微鏡下で発生/再生の様子を観察することが可能であり、再生モデルとして非常に優れている。特にメダカはゼブラフィッシュと比較してゲノムサイズが小さく特定の遺伝子のクローニングに有利であるばかりでなく、種々変異体を作りやすく、将来その変異と原因遺伝子の対応が可能となる。ゼブラフィッシュやメダカのヒレは切断後、約2週間で元に戻り、再生研究の材料として特に優れているにも関わらず、これまでゼブラフィッシュやメダカのみならず魚のヒレを使った再生研究はほとんどなされていない。ヒレの再生には骨、血管、神経などの各組織の形成も惹起され、その再生過程は発生過程の繰り返しである。我々は試みにヒレ切断後2日目の再生芽が構築された直後のcDNAと、7日目のヒレ再生が盛んな時のcDNAを単離し、それぞれ150個あまりDNAシークエンスを行った。その結果、発現している遺伝子群は再生時期で非常に異なり、その発現遺伝子がヒレ再生の各段階における組織特異性を示していると考えられる。従って各ヒレ再生段階に発現している連伝子群の網羅的スクリーニングを行うことにより、どのように組織形成されるかその全体像を捕まえることが可能になると共に、組織形成特異的遺伝子のクローニングが可能になる。実際にヒレ再生特異的に発現している遺伝子が再生のメカニズムに関与しているかどうかゼブラフィッシュを用いfeasible studyを試みた。 骨、血管、神経等の再生が盛んなヒレ切断後7日目に特異的に発現している導伝子をdifferential screeningし、新しいトランスグルタミナーゼ遺伝子を得た。この遺伝子は心臓原基、血管に特異的発現を示した。アンチセンスによる発現ブロックを試みたところ、心臓形態異常が観察され、心臓血管系の形成に機能する遺伝子であることが示唆された。次に同様の方法で再生に係わる幹細胞集団が存在する再生芽を形成する時期(すなわちヒレ切断後2日目)に特異的に発現する新規遺伝子のスクリーニングに成功した。この遺伝子は胚発生時においても体節特異的に発現する遺伝子であり、過剰発現により体節形成に異常が生ずることが、体節の形成に重要な機能をする遺伝子であることが明らかになった。
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