アサガオは、江戸時代後期に多くの自然突然変異体が単離され、さらに大正から昭和初期にかけて、わが国で古典遺伝学的研究が盛んに行われた。本研究の目的は今後の分子生物学的研究の基礎となるようなアサガオのゲノム解析を行うことである。我々のグループは既に、アサガオの変異の大部分は、En/Spm系のTpn1類縁のトランスポゾン(Tpn1ファミリー)の挿入によるという事を見出している。具体的には以下の項目について研究を行った。 1)突然変異系統の解析・整理:500系統以上、約3000個体の系統更新・写真記録を行い、この際に各系統の突然変異形質の記録を行った。2)統合的連鎖地図の作製:約400のAFLPマーカー、表現型マーカー、クローン化された遺伝子の分子マーカーを用いて15連鎖群からなる最初のバージョンの連鎖地図を作製した。今後、AFLPマーカーを、より精度の高い、クローン化された遺伝子やESTによる共優性マーカーに切り替えていきたい。3)Tpn1ファミリーの解析:Tpn1ファミリーを含む約200クローンを制限酵素地図で分類し、現在までに24グループについて塩基配列を決定した。その結果、内部配列はアサガオの遺伝子を取り込んだ特殊な構造をしていることが明らかになった。塩基配列決定したTpnの中でtransposaseをコードしている自律型因子を同定する。4)Tpn1ファミリーを指標にした突然変異体の原因遺伝子の単離・解析:Tpnによりタグされた未知有用遺伝子を簡単に同定できる簡易トランスポゾンディスプレイ(Simplified Transposon Display;STD)法を開発し、紫地に青色の絞り花を咲かせる易変性「紫」変異purple-mutableの同定に成功した。このSTD法は非常に有効であり、今後、他の易変性を示す突然変異体に応用し原因遺伝子を単離する。4)均一化cDNAライブラリーの作製・塩基配列決定等については現在準備を行っている。
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