生物の種多様性は熱帯・亜熱帯域の低緯度地域で高く、高緯度地域になるに従って減少することが知られている。しかし、依然として種の多様性を生み出すメカニズムは不明である。本研究計画では、沖縄に自生しているクロトンを用いて、多様性創出における転移因子の役割について基礎的知見を得ることを目的とした。6系統のクロトンについて、ヨナグニサン(蛾)Mariner-Like Element(MLE)配列中の転移酵素に対するコンセンサスプライマー用いPCR増幅を行った。その結果、用いた全ての系統において予測される500bpのバンドが検出され、MLEの存在が示唆された。RNA型転移因子の一つであるTy1/Copiaの逆転写酵素の配列に対するdegenerate PCRをおこなった結果、約300bpのPCRクローンが得られ、ワタのTy1/Copiaレトロポゾンと68%の相同性を示した。マングローブを含む樹木性熱帯植物27種の中で、デイゴとフクギからクロトンと同様なMLEのPCRクローンが得られた。今回、同所的に生息する昆虫のMLEが植物であるクロトンに見いだされたことと、クロトン以外の熱帯植物にも同様な配列が認められたことは、MLEが種を越えて同所的に水平伝播していることを強く示唆している。
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