研究概要 |
本研究費補助金の支給を受けた平成12年度での研究実績は以下のとおりである。ゼブラフィッシュを用いて光量子エネルギーを介した特定の遺伝子発現の制御系の確立を目的とし、GFP及び転写因子Engrailed2をコードするmRNAを試験管内で合成し、新規に合成されたケージ物質(Bhc-diazo)とリン酸基を介して結合反応を行ない、ケージドRNAの効率的合成を可能にした(RNA塩基32baseに1分子のBhcが結合)。in vitro translation assayの結果、ケージドRNAはさまざまな高次構造を形成し、著しく翻訳活性が阻害されていた。一方、365nmの紫外線を低レベルで照射すると脱ケージ反応(uncaging)による高次構造及び翻訳活性の回復が確認された。ケージドGFP RNA及びケージドengraited2RNAを1細胞期の胚にマイクロインジェクションで導入し、発生の各段階で紫外線を全身または組織の一部に照射すると、照射領域に特異的に導入RNAの発現が誘導されることをGFP蛍光と抗体染色で確認した。さらに、1細胞レベルでの発現誘導を可能にすべく、紫外線照射領域を直径2マイクロメーター以下に絞ることが可能な2光路落射式ピンホール/スリット照射装置を設置し、受精後12時間以降での紫外線ビンポイント照射で単一細胞でのコンデイショナルな発現誘導を可能にした。さらにα-actin遺伝子の発現調節領域(筋肉細胞特異的発現を支配)直下にGFPのコーデイング領域をつなげたプラスミドDNAをケージングし、胚全体に紫外線を照射することで,モザイクながら胚の体壁筋特異的なGFPの発現を誘導することにも成功した。さらに、本法により頭部特異的にEngrailed2を過剰発現した場合、中脳テリトリーが劇的に拡大し、終脳及び間脳テリトリーをほぼ完全に駆逐することがわかった。
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