ゲノム上にコードされるタンパク質の機能を網羅的に解析するひとつの指標として、われわれは細胞の形態変化の調節に注目している。この細胞形態の変化は発生の様々な過程で観察される一般的な現象であり膨大な数の因子によって制御されていると考えられる。しかし、これらの因子は無秩序な集合体ではなく限られた数の情報伝達経路上に存在している。従って、ゲノム全体を対象として網羅的に細胞形態の変化を制御する因子を同定していくことにより、機能的に関連した多くのタンパク質をグループ化することが可能であり、生命システム解明に向けてのタンパク質機能をデータベース化する際に重要な貢献をするものと考えられる。 われわれは従来より神経細胞の形態変化を解析してきていることから、中枢の神経細胞に焦点を絞り、その細胞中でゲノム上の任意の遺伝子を発現させて細胞形態に与える影響を観察する計画をたてた。そのために、まずショウジョウバエ脳内における少数の神経繊維をGFPで標識する系をGAL4/UASを用いて作製した。このことにより少数の神経繊維を可視化することができるようになりその形態変化を調べることができるようになった。この可視化された神経細胞でゲノム上の任意の遺伝子を発現させるために都立大学相垣研究室で作製された遺伝子探索システムの異所発現ライブラリーを用いて解析した。今までに880系統調べたところ、743系統が成虫まで育ち、そのうちの333系統に神経繊維の形状に変化が生じていることがわかった。瘤様の形態誘導、神経繊維の過伸長などの形状変化が含まれ、その中から約10系統に絞って分子遺伝学的な解析を進めている。
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