<背景と目的>ヒト本態性高血圧症は複数の遺伝子が関わる多因子疾患と考えられている。しかしながら、その原因遺伝子は未だに同定されていない。ヒトの遺伝子疾患の原因遺伝子を解明において、マウスを用いたphenotype-drivenアプローチがある。本研究はphenotype-drivenアプローチよりマウスの血圧関連遺伝子座を明らかにするため、一つはENUによる血圧変異マウスの作製を行う。他の一つは近交系マウスを利用し血圧QTLを明らかにすることを目的とした。<検討結果>ENUによる変異マウス作製は、低血圧アンギオテンシン受容体欠損マウスを基盤系統としてENUミュータジェネシスを行った。基盤系統にENUを投与後、不妊検定、妊娠検定を経た後、基盤系統と交配させ、G1世代を作出、G1世代の個体に対して血圧のスクリーニングを行う。現在妊娠検定を行っている。一方、近交系マウス血圧QTL解析は、収縮期血圧に差がある2つの系統、B6とA/Jを見い出した。この両系統のバッククロス世代を150個のマイクロサテライトマーカーを用いてゲノムワイドスキャンを行った。B6バッククロスデータよりメインスキャンにて、第1染色体上に2つ、第4染色体と5染色体上に各一つ合計4つのQTLを同定した。またペアースキャンにて第6染色体と第15染色体のマーカー間にて相互作用する血圧QTLが同定し、この解析から合計6個のマウス血圧QTLを明らかにした。<考察>現在までに報告されているマウス血圧QTLは、今回の我々のデータと自然発症高血圧マウスからのデータがある。そして両結果より12の染色体上に16の血圧QTLがマップされた。これらマウス血圧QTLは、ラットやヒトにおいて示された血圧QTLと良く一致していた。従って、近交系マウスからの血圧遺伝子座解析アプローチは、高血圧原因遺伝子解明のため有用であるとことが推察された。今後ENUでの変異マウス作製を更に進行されると共に、さらに近交系マウス血圧QTLの解析を進展させてゆく予定である。
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