研究概要 |
パーキンソン病(PD)は、中高年に発症し、ドパミンニューロンの変性により振戦、筋固縮など運動障害を主症状とする神経変性疾患であり、治療薬があるが、多くの薬剤はドパミンの補充が主体であり根本的な治療ではない。PDは多因子遺伝性疾患と認知され、家族性PDではa-synucleinやparkin遺伝子が発見されたが、患者の大部分を占める弧発性PDでは疾患感受性遺伝子は証明されていない。弧発例では、振戦を主体とする群、抗パ剤で副作用を起こしやすい群など、その経過・中心となる症状・薬剤の効果は患者により異なり、このことは従来PDとして一括して行われていた遺伝解析に階層化を可能にし、また遺伝子多型によって患者個人個人に必要な薬剤を必要な量投与するオーダーメイド医療が可能であることを意味する。 本研究では、候補遺伝子から未知のSNPを探索し、SNPをもとに患者群と正常群で階層化も考慮した関連解析を行い疾患感受性遺伝子を同定すると同時にSNPと各薬剤への反応性、副作用との関連を明らかにしオーダーメイド治療法を確立する、ことを目的とし以下の結果を得た。1)PD患者、正常対照それぞれ約250名を対象にし、PDの疾患関連候補遺伝子19個21SNPのタイピングを行い、BDNF遺伝子480G/AのAAホモ接合体が患者で有意に多いことを見い出した。2)大人数の対象を効率的にタイピングできる方法を決定するため、Pyrosequencing法、SnapShot法、TaqMan法などを試用検討し、384個同時に測定できるTaqMan法が一番有用であるとの結論を得た。3)これまでに患者の詳細な臨床データのあるDNAサンプルを約350収集した。さらに、PDの専門家であり、PDに関する顕著な研究業績を持ち、かつ多数の患者を診療している順天堂大、香川中央病院と共同で収集・解析を行うので、平成13年度には患者1,000人のDNAに到達できることが期待される。
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