本研究は、インプリンティングという哺乳類に特異的な遺伝子発現機構に着目し、多因子性疾患にはしばしばインプリンティングの効果が見られ、それが従来の連鎖解析的アプローチによるこのような遺伝病の責任座位の特定を困難にしている一因でもあることから、インプリント遺伝子を我々が独自に開発したアレリックメッセージディスプレー(AMD)法を用いて組織的に明らかにし、究極的には、検出した遺伝子群のマッピング及び機能解析によりこのような多因子性疾患の原因の解明と治療を目指すものである。我々は、多数の転写物のcSNPsなどの多型情報を一度に視覚化しかつそのアレル別発現状況から網羅的にインプリント遺伝子を検出する独自のアレリックメッセージディスプレー(以下AMD)法を考案し、更に2系統のマウス及びそれらを交互に交配して得たF1にAMDを適用することで多型性転写物の発現状況が両アレル性であるか単アレル性であるかを視覚化するという新規のインプリント遺伝子検索法を開発し、実際にAMDによるスクリーニングで疾患重要責任座位にいくつかの遺伝子を同定することで、その有効性を実証してきた。今回我々は、ミトコンドリア遺伝子による多型を完全に排除する目的で、このAMD法に核移植マウスを適用し、こうして開発した改良型AMDを用いることにより、あらゆる組織すなわち脳、十二指腸、心臓、腎臓、肺、肝臓、骨格筋、卵巣、子宮、脾臓、精巣、膵臓を用いて数万バンドをサーベイし、ややleakyなインプリント遺伝子も含め現在のところ母性発現遺伝子30と父性発現遺伝子14の合計44のインプリント遺伝子を同定する事が出来た。現在これらを解析中である。
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