ヒト疾患における遺伝的要因、特にゲノムの一次構造の多様性あるいは変異を迅速に探索していくツールの開発は、多因子疾患の病因解明だけでなく、隣接遺伝子症候群などの先天異常や癌など病型がおなじでありながら複雑な表現型を示す疾患においても、その分子病態を明らかにしていく上で必須である。このため、網羅的にかつ高精度にゲノムDNAコピー数の変化を検出する高密度・高感度マイクロアレイの開発を推進し、以下のような成果を得た。 1.マイクロアレイ作成に必要なクローンの単離 標的DNAとしては、プロモーターを始めゲノムの大半を占める非コード領域の情報も不可欠であることからgenomicDNAクローンを選択した。既に約200の既知遺伝子を含むBAC/PACクローンからのDNA単離を終了するとともに、全染色体を1Mb間隔で検索することのできる高密度マイクロアレイ用として別に約3000個のBACクローンからのDNA単離を進行中で、約20%を終了した。 2.マイクロアレイの作成に関する技術開発 Preliminaryな検討から、targetDNAの安定な量と質の確保には、BAC/PAC DNAをtemplateとしたcomplexityの高いPCR法による調整を選択しUCSF Cancer Center のJoe W.Gray博士のグループとの共同研究により数種のプロトコールの有用性を確認している。 3.マイクロアレイの検出系の技術開発 プローブDNAの蛍光色素によるラベル法およびhybridization条件は既存の方法の改変により対応し、モデル系での有効性を確認した。 4.マイクロアレイの精度管理のためのモデルとその評価 マイクロアレイによるゲノムDNAコピー数解析のモデルとするために、癌細胞株を対象にCGH法ならびにFISH法で全ゲノムの詳細なコピー数の増加・増幅・欠失を決定した。これらの一部を用いたpreliminaryな検討では、hemizygousおよびhomozygous等の欠失に関して1コピーの変化まで検出できることを確認した。
|